PhD. AkbarによるEDI(公平性、多様性、包摂性)に関する記事のご紹介
2024年11月に、ACTジャパンの活動を視察するため、アメリカ心理学会(APA)から3名の先生方が来日されました。そのうちのお一人であるAPAのチーフ・ダイバーシティ・オフィサー、Maysa Akbar Ph.D.が、APAの月刊誌「Monitor」で多様性の特集を組んだ11月号の巻頭記事を書かれていましたので、和訳して、JUPIの講演会に参加された方にお配りしたのですが、その記事をこちらでもご紹介します。3名の先生方が来日訪問された10日間については、また後日記事にしてこちらで配信予定です。
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人種の公平さを作りあげるための協働
Maysa Akbar, PhD
数十年にわたる心理学が証明しているように、人種的平等の促進はすべての人に利益をもたらします。そして、それを完全に達成するには私たち全員の努力が必要です。この特別号では、人種的平等の促進に関する最新の心理学的研究を包括的に紹介するとともに、その先駆者たちの刺激的な事例を紹介できることを誇りに思います。私たちの目標は、研究室、実習、教室、コミュニティで実践できる実用的な洞察を提供することです。
行動を起こす必要性はかつてないほど高まっています。近年、人種的不平等と、それが私たちの健康、精神的健康、対人関係に及ぼす影響が広く認識されるようになりました。世代を超えて受け継がれる傷、未解決の対立、不安、痛みが表面化しました。同時に、短いながらも重要な希望の時期もあり、私たちが変化に向けて奮起することを可能にした転換点となりました。人々はリスクを冒すことをいとわず、長らく先延ばしにされてきた困難な対話に耳を傾け、真実を語り、正義を擁護しました。コミュニティは互いに耳を傾け始め、関係が検証されました。人々が過去の被害に対する責任を取り、個人的な偏見を認め、完璧な発言をしなければというプレッシャーを手放すのを目の当たりにしたことを覚えています。世界は、実際の変化を生み出すために協力することの力と利点を理解し始めたと思います。
公平性、多様性、包摂性(EDI)に携わる同僚の多くは懐疑的で、人種的平等をめぐる勢いは一時的なものなのか、それともムーヴメントなのか疑問に思っていました。これはパフォーマンス的なものだったのでしょうか、それとも私たちは歴史の始まりを生きているのでしょうか。私がこの背景を述べるのは、私たちが変化への意欲を感じたのがつい最近だったということを忘れがちだからです。数年後の今、EDI は私たちの社会で非常に不安定な立場にあります。 私たちは心理学者として、この仕事が単独で行われるべきではなく、現状を打破し変革を生み出すためには、時に基礎に戻る必要がある、ということを知っています。そこには、EDI が求める共有プロセスの基本的な要素である、前向きで機能的で、協力的な関係性が含まれます。私たちの科学と実践から、協力的な関係は、多様な視点、相互の説明責任、修復への意欲、信頼を築くことへのコミットメント、そして違いにもかかわらず調和して生きる能力に、開かれた姿勢で取り組むことによって可能になることが示唆されています。
APA と心理学の分野は完璧ではありませんが、私たちは、多大な害をもたらしたこの130年の歴史を打破するために、実践と組織を継続的に進化させ、前進しています。間違いは避けられませんが、社会の動向にかかわらず EDI にコミットし続けます。APA では、心理学の未来を形作るための取り組みを主導する人々が日々限界を押し広げています。私たちは過去と向き合い、オープンな対話に参加し、メンバーと積極的につながることで、前進の道筋を示しています。この旅は困難なものながら、人種的不正義の歴史に立ち向かう他の組織にとっての青写真ともなり得るでしょう。APA は、政策決議と行動計画は、癒しと和解の複雑なプロセスの最初のステップにすぎないことを認識しています。真の進歩は、EDI の原則を私たちの仕事のあらゆる側面に組み込み、相互に利益のある関係を再定義し、前向きな協力関係を強化して維持するという継続的な取り組みに表れるでしょう。
後継者計画と、この仕事を進めるリーダーたちのコミットメントは、私たちの取り組みを前進させる上で不可欠です。このため、道を切り開いた勇敢で勇気ある先駆者たちの功績を認めることが極めて重要です。私たちはまた、この号全体で紹介されている有望な先駆者たちの画期的な仕事ぶりと、こうした取り組みへの献身を称賛したいと思います。
体系的な変化に向けた運動を構築するために私たちが行っている仕事は、私にインスピレーションと力を与えてくれます。この特別号を読んで、皆さんも同じように感じていただければ幸いです。
(訳:特定非営利活動法人日米心理研究所)
(原文)
https://www.apa.org/monitor/2024/11/special-issue-racial-equity 「Monitor」(Vol. 55, No. 8)